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■ 「歯科医」と「患者」の不幸な関係

数年前にNHKで「保険でなぜ良い入れ歯が入らないのか」ということをテーマに番組が作られました。当時、この番組の反響は大きく、歯科界でも、保険で良い入れ歯を入れようという運動が盛り上がりました。しかし、さしたる成果もないまま尻切れとんぼで終わってしまいました。番組では、保険でいくら入れ歯を作っても満足しなかった患者が、「自費」の入れ歯を入れたらやっと満足して噛めるようになったというエピソードを中心に紹介していました。自費で良いものができるならば、なんとか保険でも良い入れ歯が作れないだろうかというのが番組のテーマでした。

確かに、保険うんぬん、自費うんぬんという話はそれなりのテーマになると思いますが、番組制作者は最初から本当にこの程度のことを問題にするために番組を作ったのでしょうか。自費治療で良い入れ歯が作れるのであれば、保険治療でも何でも、患者さんが納得する良い入れ歯を作ればいいじゃないですか。常に最良の治療をするにあたり、保険だろうと自費だろうと関係ありません。医者なんですから。保険なら痛い麻酔を打つが、自費なら痛くない麻酔を打ちますよという医者がどこにいますか。

日本中に入れ歯でどうしようもなく困っている人がたくさんいるのが現状です。それを打開するために何が問題なのかを探ろうとして作った番組ではなかったのでしょうか。重大なヒントは番組中にかくれていました。ある一人の患者が、5つも6つも自分の入れ歯を持ち出してきて、こんなにあるのにどれ1つとして、まともに噛めないと嘆くシーンが映し出されました。この現実こそ最も注目しなければならないことなのです。専門の歯科医がきちんと取り組んで作った入れ歯が、どれもまともに噛めないなんて変だと思いませんか。どの歯科医もみんな、保険診療だからということで手を抜いたとでもいうのでしょうか。

答えは簡単です。患者さんの満足する入れ歯が作れないのです。

歯科治療には、他の医科には見られない特殊性があります。いや、歯科治療は医学全体の中で特殊治療そのものといってもよいくらいです。その特殊性とは「歯には再生能力が無い」ということです。再生能力を考慮して治していく治療法ではないのです。

簡単な例を引き合いに説明してみましょう。身体のどこかに小さな良性のいぼができたとします。特に問題がなければ、外科にでも行って取ってしまえばそれでおしまいです。切り取ったときに多少穴があいてもしばらくすれば、もとの組織がそこにできてきて治ってしまいます。患者さんは、いぼが取れ、穴もふさがって元通りになれば「治った」と納得するでしょう。

さて、ここでもし「いぼを取った穴はふさがらないので金属を詰めておきました」と医者が言ったとします。穴に銀色の金属が入っていたらびっくりして腰を抜かしてしまうかも知れません。皮膚に銀色の金属なんかを埋められてしまったら、治ったなんて気持ちにはとてもなれないですよね。そこなんです。「治った、治した」ということは、完全に元通りになることを意味していて、人は当然そのイメージをこの言葉に持っています。再生能力のある生きた軟組織なら全く元通りに戻ることが多くあるので、治ったという概念とぴったり合います。

ところが歯科は、再生能力が無く生きた組織で回復できない歯を扱っています。単純な虫歯でできた欠損を、生きたもとの歯質で戻すのではなく、異物である銀合金で戻すということをします。本当なら「治った」気にならなくて当たり前なのです。でも「治しましたよ」と歯医者は言ってしまいます。患者さんはそう言われると、完全に元通りに戻ったと思ってしまいます。

ところが実際は完全に戻っていないために、健康な歯質で覆われていた時と比べていろいろ不都合が起きてくるのです。歯科で使われるこの「治す」という言葉のせいで、歯科医はちゃんと治したのに何故クレームが来るのか、患者さんがすっきり治ったと反応しないのかと思い悩みます。患者は、治ったはずなのに不都合なところがいろいろ出てきておかしいなと思い、歯科医に不信の念を抱いてしまいます。完全に治せない歯科治療を「治す、治した」という言葉で表現してしまったところから、「歯科医」と「患者」の不幸な関係が始まったと言えるのではないでしょうか。

冒頭で紹介したようなテレビ番組、新聞や雑誌で組まれる歯科特集、歯科と一般の人との討論会など、どれをとっても終わった後に、何かしっくりこない、霧がかかったような感じにとらわれたことはないでしょうか。実はこれはすべてと言ってよいくらい、医療の根幹に位置するこの「治す、治した」という言葉が、歯科では実態を正確に表していないために起きてしまうことなのです。そこで、まあこれは私の一案なのですが、歯科で行う治療を“一部回復処置”という言葉に置き換えてみたらどうでしょうか。こうすれば歯科医と患者さんとの通りが少しはよくなるように思えるのですが。“一部回復処置”なんだということを踏まえて“全部回復処置”を目指す。つまり、できることはできる、できないことはできないとはっきりさせれば、歯科医学は力強い進歩ができるのではないでしょうか。

最後にインプラント治療をどのように捉えるのが一番よいのかお話ししましょう。

インプラント治療とは人工ではありますが、口の中に新しい歯を誕生させる治療と思ってください。つまり「インプラントとは新しい歯の誕生」なのです。第1話の「インプラント治療の要」でも述べたように、自分の理想と寸分違わぬ歯が入るわけではありません。子どもの鼻の高さが自分の思い描いた理想より1ミリ低かったので気に入らないというようなかたは、インプラント治療にはむいていないと思います。インプラントは他の修復方法と比べて恩恵は多大にあります。ですが、なにぶんにも生まれたばかりの未熟な歯です。今までの生きている歯とは違う人工の、新たな個性をもった歯です。患者さんとしっくり折り合いがついて一人前に使えるようになるまでには、手間も暇もかかります。その未熟さや新しい個性を受け入れて、子どもを育てるように大事に扱い、自分のものにできるかただけがインプラント治療の恩恵にあずかれると思っています。

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